「人類の歴史は感染症の歴史だ」と呼ばれることがあるほどに、人類は感染症に悩まされてきました。
太古の人々は感染症を、直接触れずに伝染をしていくために、呪いや祟りだと考えていたようです。
しかし古代ギリシャでは元素説(万物は元素で出来ている)という考えが基本だったので、彼らは空気などの元素が悪い状態になったのものが、病気の原因だと考えました。
この仮説は19世紀頃まで続きましたが、この仮説の欠点は集団感染の説明はできても、ヒトからヒトへの病の感染は説明できなかったことです。
ヨーロッパでのペストの流行によって、「やはり目に見えないなにかが病気の原因」だと考える医師がいたり、微生物の存在が発見されたり、微生物の存在が生物学者たちに軽んじられて忘れられたり、やっぱり微生物の大切さに気づいた生物学者たちが研究したりしているうちに、ドイツ人の医師ロベルト・コッホは「病気の原因は病原菌だ!」と突き止めました。
コッホが作った病原体の原則は、新型コロナウイルスの流行当初にも、病原体の立証のために利用されたりしているそうです。
そんなこんなで病気の原因が呪いでも悪い空気でもなく、「病原体だ!」と突き止めると、人間が何をしようとするかというと、病原体だけを殺そうとしました。
病原体だけを殺すことができれば、人間は病気から解放されるからです。
いまはこうした薬が「抗生物質」と呼ばれたりしていますが、抗生物質の1つのペニシリンの発見者で、1945年にノーベル賞を受賞したフレミングは、受賞の場で警鐘を鳴らしました。
「抗生物質ができたからと、細菌をなめるなよ。安易に抗生物質を利用するのは危険だぞ。細菌は抗生物質を上回って、どんどん耐性を身に着けてしまうぞ」
悲しいことにフレミングの予言はあたってしまったようで、2050年には薬剤耐性の病原体により病気で1年間で命を落としてしまう人類は、世界中で1000万人にも及ぶとされています(これは癌の年間の総死者数よりも多いです)
まだまだ人類と感染症の歴史は終わりそうもありませんね。
もしかしたらこれからが、本当の戦いなのかもしれません。